Trick or Treat!!

お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!!





+-+-+ 悪戯 +-+-+





ピーポーン

棗の部屋に響くチャイムの音。

ピーンポーン

ピーンポーン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピンポン、ピ・・・

「うるせえ。誰だよ!!」

最初は無視していた棗だったが・・・あまりにもうるさく、そして何回も鳴るチャイムに嫌気がさし
扉を開けてしまった。





「Trick or Treat!!」





「は??」

扉の前には、魔女の格好をした少女が満面の微笑みで立っていた。その少女とは、蜜柑だった。

「だぁ〜かぁ〜らぁ〜Trick or Treat!!今日はハロウィンやからな〜☆っとと、お邪魔しま〜すvv」

そう、今日はハロウィンなのだ。アリス学園でもパーティーが催されている。
棗はともかく、お祭りごとの大好きな蜜柑ならパーティーにいるはずなのだが・・・

なぜか、蜜柑は棗の部屋に来ていた。





「はあ・・・」

棗は大きくため息をつく。

(ったく、男の部屋にひとりで来るなよな・・・しかもそんな格好して・・・)

そう、蜜柑の魔女の格好はミニスカートだったのだ。

呆れる反面、蜜柑が来てくれたことに嬉しさを覚えた棗だった。
けれど、ミニスカートでこられるのは棗としても堪えるよう。

「???」

けれど、蜜柑にそんな事分かるわけもなく・・・。
のんきな顔をして棗の部屋の大きなベットに寝転がっていた。





「それで、どうして俺の部屋に来る。」
「棗、パーティーに参加せえへんかったやろ??だから、棗にはハロウィンを体感してもらお思うて!!」

そう、蜜柑は棗がパーティーに来ていないのを不思議に思ってか
心配してか、パーティーを抜け出してきたのだ。

「あんな、聞いて聞いて!!パーティーはすごかったんよ!!
 みんな仮装しててな〜vv仮装は何しても自由やからいろんな格好の人がいっぱいいたわ〜!!

蛍もうちと一緒で魔女やったんよ〜★
ルカぴょんは〜なんか蛍に無理やり魔女の格好させられそうになっとったなあ〜
あ、パーマのは笑えたで〜vv猫娘!!

そのまんまって感じやよな〜あ、心読み君はカボチャかぶっとったなあ〜。」

まあ、蜜柑が1人で喋っているのはいつものことで、棗もまんざらでもなく蜜柑の話を聞いていた。
そう、あの名前がでてくるまでは・・・・・・





「あ、あとな〜翼先輩はドラキュラの格好やったよ〜vv」





“翼先輩”――蜜柑にとっては良き先輩である。けれど、棗にとってはただ邪魔な存在なだけなのだ。

当然、そんな人のことを話されて機嫌が良いわけは無い。むしろ、不機嫌であった。





「・・・・・・」
「・・・あれ??棗??怒ってる・・??」
「別に・・・・・・。」

こういうところは、棗もやはり子供――というか、独占欲が強いのだ。

蜜柑が他の男と一緒にいるだけで、嫌というのだから。
それどころか、蜜柑の親友―蛍といるのすらも快くは思っていない。

「棗、うちなんか悪いこと言った??なら謝るから!!怒らんといて〜;;」

「うっ・・・・・・別に怒ってねえし。」

先ほどまでの不機嫌さはどこへやら。

蜜柑はベッドからガバっと起き上がり、泣きそうな顔をしている。
そんな蜜柑に上目遣いで頼まれたなら怒ってなどいられるわけが無い。

棗は蜜柑の涙に弱い。というより、惚れた弱みというのであろう。

「ホントに??」
「ああ、だから泣くなっての。」





優しいね

棗は優しいね

なんだかんだ言って、いつも黙って話を聞いていてくれるし

いつも守ってもらってる

本当は誰よりも優しいのに・・・・・・

棗は人と関わろうとしないから・・・・・・

自分と関わったことで、誰かが傷つくのを恐れているから

今日だって、棗はパーティーに来なかった

ルカぴょんに聞いても、理由は分からなかった

なにかあったんじゃないかって

心配で 心配でたまらなくて

思わずパーティーを抜け出して

気が付いたら 棗の部屋に来てた

我ながら ちょっとビックリしちゃってたりする

“恋する力は偉大だ”

なんて詩人みたいなことを考えてみたりして





ずるいよな・・・ホント。

そりゃあ、影はウザイし。

今井にしてみたってムカつくけど・・・・・・

そんな泣きそうな目で見られたら、敵うわけ無いだろ??

まあ今日は、蜜柑が来てくれた。それだけでいいとするか。

蜜柑はパーティーとか大好きだから

パーティーでめちゃくちゃ騒いでるのかと思ってたけど

蜜柑は来てくれた

まったく期待してなかったことだったから

嬉しかった

パーティーを抜け出してきてくれたって事実が嬉しかった

ったく。俺ってばホントに蜜柑に弱いんだよなあ・・・





まあ、どれもこれも全部

ただ

棗のことを

蜜柑のことを

好きだってことで





「あ、棗にまだお菓子貰ってない!!そやそや、Trick or Treat!!」

やっぱり、蜜柑としてはお菓子を貰っておきたいところ。

棗の部屋を訪れた理由に、「お菓子を貰いたい」というのも入っていたのではないだろうか??

棗は幹部生だし、お小遣いもいっぱいもらっている。

そんな棗からはどんなお菓子がもらえるのか・・・と期待していた蜜柑。

けれど・・・・・・





「やだ。」





蜜柑の淡い期待は、棗の一言によって打ち砕かれてしまった。

「なんで〜??“Trick or Treat!!”って“お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!!”って意味やよ??
 ・・・もしかして棗・・・知らなかったん??」

蜜柑としては、お菓子がもらえないことがどうしても悔しいらしく。

せっせと棗のあらさがし。

痛いところを突いて、棗にお菓子を貰おうという魂胆なのだ。

なんとしてでもお菓子が欲しいご様子。

「・・・お前と一緒にすんな。それぐらい誰でも知ってるだろ。」
「うっ・・・」

間髪いれず、棗のツッコミが飛んだ。

蜜柑はついさっきのハロウィンパーティーではじめてこの意味を知ったのだ。

痛いところを突くつもりが、逆に痛いところを突かれて、動揺しているよう。

「じゃ、じゃあ何でなん??あ、棗お菓子!!お菓子持ってないんやろ??」

言葉も、どもってしまっている。

けれどもしっかりお菓子についてのことは忘れていない。
さすが、というかそこまでお菓子が欲しいのか・・・。

食に貪欲なところはもう、蛍化しつつある蜜柑であった。

「ある。けど、お前にはやらねえ。」

そんな蜜柑に対し、棗はいつもながら冷静で。

それどころか、この状況を楽しんでいるよう。

「何で〜??あんたってそんなに性格悪いん!?」

お菓子がもらえないこと。

棗にバカにされたこと。

それがとても悔しかったらしく、蜜柑キレてしまった。

「悪いのかもな〜。」
「ムッキーっ!!もう、そんな棗には悪戯するでっ!?」

お菓子がもらえないのならば悪戯してしまおう。

蜜柑らしいというかなんというか、安直な考えで。

・・・・・・と言いたいところだが、ハロウィンではそれが常識なわけだから。

蜜柑のとった言動は、常識的なわけであった。

「どうぞ??」
「え??」

“悪戯する”そう言われたのに、何故か棗は不敵な微笑みを浮かべていて。

その微笑みに蜜柑も驚いたよう。

棗は、ベッドに座っている蜜柑の傍に寄り、耳元でそっとささやいた。





「菓子をやんなかったらイタズラしてくれんだろ??」





「えっ///」

後ずさる蜜柑。

けれど・・・・・・「ゴンっ!!」と鈍い音。

そう、後ろは壁だったのだ。

もはや蜜柑に逃げるところは無し。

「さっきお前が言ったじゃねえか。“Trick or Treat!!”“お菓子をくれなきゃ悪戯するぞ!!”って。」
「え、あ、えっと・・・」

みんな、パーティーとわかっていてお菓子を用意していたので、蜜柑は“悪戯”など、誰にもしていなかった。

棗に“悪戯をする”すると言ったのも、勢いで言ってしまっただけで。

“悪戯”のことなどあまり考えていなかったのだ。

そう、“こちょこちょ”をすればいい、ぐらいにしか。

しかし・・・・・・この棗相手に“こちょこちょ”などできるわけもない。

「悪戯、してくれるんだろ??」

蜜柑に打つ手はなし、という訳だ。

「うう〜棗の意地悪っ!!」

「俺にハロウィンを体感させてくれるんだろ??蜜柑??」





こんなことでもしなきゃ君は気付かないだろう??

俺の気持ちに。

君は鈍感だから

それでもいいって思ってたけど。さすがにいつまでも友達じゃ困るんだよな。

俺だってちょっとは焦るさ。

だから今日は君に俺を意識させるまたとないチャンスってわけ。

そんなまたとないチャンス、俺が逃すわけないだろう??





「あっはは〜、じゃあ、うち帰るなっ!!みんなはまだパーティーにいるし・・・」

もう、逃げるしかない。

“逃げるが勝ち”蜜柑はそう思ったのだろう。

けれど、自分はベッドの上(しかも後ろは壁)に座っていて。隣には棗がいて。

この状況下で、蜜柑は逃げられるのだろうか??





「まてよ」





部屋から出て行こうとする蜜柑の細い腕をつかむもの。それは棗の手だった。

やはり、蜜柑があの棗から逃げられるわけなどなかったのだ。

棗は蜜柑の腕をグイっと引っ張ると、そのまま蜜柑を抱き寄せ、蜜柑の髪に口付けを落とした。

「な///なにするん///!?

蜜柑の言葉は無視し、またも不敵な微笑みを浮かべてささやく。

「お前が悪戯するまで、帰さねーからな。」

「///何すればいいんや!?」
「それくらい、自分で考えろよ。」
「うう〜あの、こちょこ「却下」

蜜柑が言い終わる前に、棗が否定する。

「じゃあ、何ならいいんよ〜!!」
「だから、自分で考えろっての。まあ、楽しみにしてるぜ??」
「楽しみにせんといて!!」
「いいのができたらご褒美で俺からも悪戯してやるよ」
「いいっ!!てか、それご褒美じゃないやろっ!!ご褒美なんてええからこっから帰らせて!!」
「だ〜めvv」

さあ、君にどんな悪戯してもらおうか??




END


+-+-+あとがき+-+-+

やっとできましたvvハロウィンフリー小説!!
なんとか、間に合いましたよー!!ギリギリですけど(笑
なんだか、ギャグなんだかシリアスなんだか甘々なんだか・・・。
よく分からない作品となってしまいました(笑
最後は・・・ギャグっぽい・・・ですよね??(聞くなよ
あ、一応これはフリー小説なので、貰ってもいいよという、心優しい方がいらっしゃいましたら
貰ってやってください!!

2005.10.30


+管理人の後書き+

紅羽 空栗(こうば あくり)様のサイトから強奪頂いちゃいました。
フリー小説にしては、独占欲丸出しによる棗様が素敵でしたので…//////
悪戯は棗様の18番(おはこ)ですからねえ〜(*´∀`*)
それでは、ありがたく頂戴します。

2005.10.31