『…………水玉……』


いつもの様に名前を呼ばれ、振り向いた蜜柑の瞳に映ったのは…
黒髪の少年のキレイな赤の瞳。
それは、まるでスローモーションのように、ゆっくり近づいてきて柔らかい感触が口唇に降りてきた。



《 あさきゆめみし 》



ジリリリリリ!!


バンっ!と目覚まし時計を叩いて、蜜柑は真っ赤な顔をしてベッドから起き上がった。


(…な、ななな…なんちゅう夢見てんねん!?な、棗とウチがキ…キスなんて…今日…棗の顔みられへん…)


そう思いながら、ベッドからノソノソと降り、学校の支度を始めた。
着替えて食堂に下りていくと早速、棗と流架に会った。


「…あ、お、はよう、流架ぴょん!つ、ついでに棗っ…」


思わず、流架に目線は合わせつつ、棗には顔を背けて挨拶する蜜柑の姿に、
流架も棗もその場にいた者は不思議に思った。


「?…おはよう、佐倉…どうかし……」

「あっ、野乃子ちゃん達やっ!!そ、それじゃーねっ」


不思議に思い聞こうとしたが、言葉を遮って逃げるように行ってしまった蜜柑の姿を見て、
流架は傍らに立つ親友に問い掛ける。


「どうしたのかな?佐倉のヤツ…」

「…………拾い喰いでもしたんじゃねぇのか…」

「ハハ…まさか…」


口調はいつも通りだが、棗の瞳はやや怒っていたのはいうまでもなく
その後、挨拶に来たパーマはとばっちりを受けたのだった。





学校についてからも、何げに避ける蜜柑に最初は棗も気にはしていなかった。
むしろ、静かでいいと思っていたが、だんだんと妙な違和感が立ちこめてくる。

さすがに昼休みになる頃には、棗もイライラしていた。
ちらっと蜜柑をみて、目が合えばなぜか逸らされる。

自分から無視することはあっても、されるとなると気になってしまう。


(………水玉の分際で…)


ガタリと椅子から立つと、蜜柑や蛍達がおしゃべりしている輪に入っていく。


「棗?」


流架も気になって寄って来た。
おしゃべりが止まり、棗は蜜柑の前に立つも蜜柑は蛍の後ろに隠れ、目を合わせようとしない。


「……てめぇ…なんのつもりだ?」

「べっ…別になんでもあらへんよっ!!」


棗の問い掛けにやはり目を合わせず、返す蜜柑にますます棗はイラだっていく。

こんなに大っぴらに避けておいて、なんでもない訳がない。
棗の表情をみて、蛍はこのままでは炎を出しかねない。ましてや自分は、バカの前にいる。
と考えると蜜柑の襟を掴み


「…このバカ貸してあげるわ。棗」

「えっ!?ちょおっ…ほた…??」

「…………オラ、こいっ!!ついて来るんじゃねぇぞ!!」


ぴしゃりとみんなに言い付けて蜜柑を連れて出ていった。
だが、そんな脅しが効く連中ではなかった。
蛍は、カメラを用意し流架と委員長を連れていく。
もちろん、心読みくん、キツネ目くん、野乃子ちゃんらも一緒だ。


「なぁ?なんで佐倉、棗を無視してたんだ?」

「…さぁ?聞いても頑として話さなかったわ。」

「心読みくん、読めなかったの?」

「それが、無効化のせいか読めなかったんだよね。」



ひそひそ話をしながら、みんなは棗らの後を見つからない様に追った。




蜜柑は、棗にズルズルと引きずられて人気のない階段まで連れてこられた。


「…で、なに無視してんだ?てめぇは」


真っすぐ見てくる瞳に今朝の夢を思い出されて、頬が熱くなっていく。


「…だ、だから別になんともあらへんよ…」


しょうこりもなく、目を合わせない蜜柑の顔を押さえると、蜜柑は恥ずかしくなって目をつぶった。



顔を真っ赤にしたまま、そーっと目を開けると、どアップの棗がいて、意地悪風に笑っていた。


「…なんだよ、キスされるとでも思ったのか?」


ニヤニヤ笑う棗に対し、蜜柑は涙目になりながら


「……う………ん…////////」

「………………はっ?」



冗談で言ったつもりのハズが思いがけない返事により、呆気になる。
しかし、今目の前で涙目で真っ赤になる蜜柑を見て可愛く思えた。


「…お、まえ……何言って…」

「せ、せやかて…け、今朝…夢で……の……//////」


――そうか。

と棗は納得した。
つまり夢で

【俺とキスする夢】

をみて、恥ずかしかった。
というわけか……。
と、聡明な棗は蜜柑の考えが分かり、その上嬉しくなっていた。


こんな風に意識されているコトを。


そして、真っ赤になって焦っている蜜柑のツインテールの片方を持つと、優しくキスをした。
その行動に、蜜柑はゆでだこのようになっていく。


「…な、ななな…棗っ…!?///////」

「……それ、正夢だな…」

「…へっ?…んんんんんーーー!?//////////」

「…………な?正夢だろ♪」


深く口付けをし、にやりと笑う棗の姿に蜜柑は目眩を起こし


「っ!?おいっ、水玉っ?」

「……きゅー…(@。@)」


思いがけない出来事に嬉しくて、でも恥ずかしすぎて蜜柑は、そのまま倒れ込んだ。
それをみた棗は、いつもと違う笑いをしていた。




END



〜おまけ〜

蛍「中々やるわね、どーするのよ?流架ぴょん」
流「…な、べっ、別に…悔しいけど…」
蛍「あら、素直ね。」
流「う、うるさいっ!!////」
委「……ほ、蛍ちゃん?そのカメラ…」
蛍「あぁ、これ?…フッ………」
皆『『撮ったのか!?』』
蛍「フフ…いくらで買ってくれるかしらね、彼」
皆『『……………ι』』


デバガメしていた方達は、ばっちり現場を目撃してました。
会話もばっちり♪
(蛍の盗聴器により/録音可)



END



************************
あとがき

突発的妄想にて…すいません
棗、棚ボタです。


'04/9/26



※管理人の後書きは「嫉妬と不安」のページに御座います。