《Present☆Panic》



暑い8月某日
蜜柑は、夏休みだというのに副担先生に頼み、わざわざ調理室を借りてなにやら作っていた。


「…喜んでくれるとええなぁ〜♪」


ふんふん…♪と鼻歌交じりにボールの中の生地を混ぜ合わせていた。
どろどろの生地を用意した可愛らしいカップに流し込み、トッピングにアーモンドやレーズン、
チョコチップなど様々な種類を準備しておいたのをのせていく。
カップを予熱で温めておいたオーブンに入れ


「おいしく焼けてなぁ〜♪」


と呪文のように言いながらボタンを押した。
なにやら本当に楽しそうで、第三者が見ていても微笑ましい感じがするのだが
窓の外から覗いている連中にとってはそうではなかった。





その20分前
棗と流架は、蛍に呼び出されていた。


「…一体、何の用があるんだ?あの女からっ…て、おい、アレ」

「どうかした?棗…あれって今井…だよね?」


棗と歩いていた流架は、突然止まり親友の示す方角を見ると
呼び出した張本人がなにやら調理室を覗いていた。

棗と流架は不信に思いながらも、その彼女に近づいた。
気配を感じたのか、蛍はくるりと振り返ると棗と流架を見た。


「遅いわよ」


別に時間を指定した訳でもない上に、突然呼び出しておいてこの少女のこの言い様はなんなのだろう。
そんな事を思いつつも、口ではこの少女に適わないのを分かっていたのであえて流架は黙っていた。


「……一体、何の用だよ」


棗も蛍が苦手なのか、イヤイヤながらも聞くと蛍は室内を指差し


「蜜柑がカップケーキ作ってるんだけど…どうも
誰かにあげる為みたいなのよね」

「えっ……誰にっ…」

「……………」

「その反応からするとアンタらが頼んだ訳でもないのね。ったく、誰にやるのかしら…」


そんな事を呟きつつ眼下に広がる彼女特製の発明品(武器)の山を見て
流架は、自分が貰えたらいいな…と思いながらもゾッとした。
棗もなんとなく不愉快なのか鋭い眉が一層鋭くなっていた。



そんな感じで蛍、棗、流架は蜜柑を眺めていた。

やがて、ふわふわといい匂いを漂わせながら

チンッ

とオーブンが鳴って、蜜柑は嬉しそうに開けた。


「うんっ!!上手く出来たわっ♪」


少し冷ましたカップケーキを袋に入れ、可愛らしいリボンでラッピングすると
蜜柑は、楽しそうに調理室を後にした。



「……やっぱり、誰かに渡すみたいね」

「今井のじゃないの?」


一番高い可能性を口にするも、蛍は首を振った。


「私のではないみたい。ここ数日蜜柑の様子がおかしかったし、一昨日は…

『なぁ、蛍。男の人ってお菓子貰って嬉しいやろか?』

なんて言ってたのよ。」


さすがにその言葉に、興味をあまり示さなかった棗の瞳が揺らいだのを見逃さなかった。


「まぁ、とりあえず見失わない内に追い掛けるけど……アンタらも来る?」


探るように聞いてくる蛍に、流架も棗も顔を見合わせながら


「…えっと……棗どうする?」

「別にどっちでも……」


ある意味ズルい言い方である。
本当は気になるくせに自分に判断を委ねるなんて…
そんな事を思う自分に嫌気がさしながらも、自分も尋ねられたら彼に判断を委ねていたかもしれないな…などと思った。


「俺…行こうかな」

「…………じゃ、俺も」


やはり、気になるのだからココで悶々しているよりはマシだと思い答えると、やはり棗も気になっていた。
蛍はそんな二人を見て


「……素直じゃないわね」


とぼそりと呟いた。








蜜柑が走っていった方へと追い掛けると、そこは鳴海の家の前だった。
蜜柑はキョロキョロしながら、持ってきた包みをみてにんまり笑いながら玄関先で待っているようだった。


「「「…あの変態か」」」


3人は同時に呟いた。
とりあえず、影からみていると


「あっれー?蜜柑ちゃん、どうしたの、こんなところで」


相変わらずイカれた服を着た鳴海がやって来た。
蜜柑は鳴海を見るなり、嬉しそうに駆け寄っていった。


「鳴海先生〜vV」

「うぉっと…どうしたの?蜜柑ちゃん」


抱きついてきた蜜柑を軽がると抱き上げると、目の高さを同じにしてもう一度聞くと
なにやらもじもじしながら、蜜柑は鳴海に包みを差し出した。


「はい、鳴海先生!!誕生日おめでとう☆」

「へっ?誕生日って……そういえば、今日僕の誕生日だっけ…」


鳴海は差し出されたモノと蜜柑を見比べながら、自分の誕生日を思い出したようだった。
やがて、にっこり笑うと


「ありがとうvV蜜柑ちゃん、とても嬉しいよ♪」


蜜柑をゆっくり降ろすと頭を撫でてプレゼントを受け取った。


「えへへ―、口に合うとええんやけど…////」


カサカサと包みを開けるとカップケーキが入っていた。
それを1つ取り出して、口に運ぶと鳴海はまた笑顔になり


「うん、とっても美味しいよ。ありがとう、じゃ、これはお礼ね」


というなり、蜜柑の頬へ

チュッ…

とキスをした。


「ひゃあぁぁ〜////恥ずかしい!!って、わぁっ!?」


蜜柑が恥ずかしがって目をつぶった隙にまた身体が高くなった――
そう思うと、鳴海に高い高いされていた。



「あはは〜ほぉら〜〜」

「ひゃあ〜回るぅぅ〜☆」


クルクルと二人は回っていた。
一通り満足(?)したのか、抱っこしままでいると


「先生、ずっと健康でいてな。これはおまじないや♪」


さっきとは逆に、今度は蜜柑が鳴海の頬にキスをした。
二人が仲良く笑っていると……



ダンッ!!



「うわっ!?||||」

「あれ?蛍、棗に流架ぴょん。どうしたんや?」


急に現われた3人に、鳴海はドギマギと鼓動が早くなり、蜜柑は不思議そうにキョトンとしていた。


「蜜柑、何してるの?」


涼やかな声音で蛍が聞くと、蜜柑は抱きかかえられたまま嬉しそうに笑いながら答えた。


「なんや、珍しいメンバーやな。今日、鳴海先生の誕生日やからプレゼント持ってきたん♪」


その満面の笑みが気に入らなかった…
否、そんな顔にさせる鳴海が憎たらしいのか(逆恨み?)
蛍、棗、流架はそれぞれに武器、炎、猛獣を用意して


「………へぇ…そう…」

「…じゃあ、さ…」

「「「(私・俺)たちも祝ってやるよっ!!」」」


「……え―っと、君たち…気持ちは嬉しいんだけ…ど……ιι」


鳴海が冷や汗をかきながら問い掛けるも、既に3人の目はイッていた。


「ど、どうしたんや?蛍?棗?流架ぴょん?」

「蜜柑?少しの間、目を潰っててくれないかしら?」

「せ、せやかて…それ…」

「私の言うことが聞けないのかしら?」

「……は、はい…」


鳴海から離れた蜜柑は、仕方なしに茶金の瞳と閉じた。
すると、またいつものように鳴海は逃走したのか
バタバタと激しい物音が遠くへ流れていき、蜜柑の周りは静かになっていた。
蜜柑は、姿が見えなくなった蛍らを思い


「……なんか、いつの間にか仲よくてええなぁ〜」


と勘違いをしていた。






その後、ナルたちがどうなったか…
それは、周りに多大な被害をもたらしたのはいうまでもありません。




END




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あとがき

季節はずれもいいトコです。
はい、実はこのネタは5月頃から頭の中にありました。
書こう、書こうと思いながらもあっという間に夏が過ぎてしまいました。
何げに時期的に棗の話ぽくて、実はナルの誕生日ってありえねぇ―Σ( ̄口 ̄)
本当、季節ずれまくりで申し訳ございません(>_<;)
だけど、コレ蜜柑総受けってか、ナル蜜柑だよなぁ〜

書きたいネタは色々あるのに全然書けなくて、申し訳ございません。


と、とにかくこんなのを読んで下さってありがとうございましたm(__)m
感想お待ちしております。


'05/11/25
マキ*LOVE UNLIMITED



※管理人の後書きは「嫉妬と不安」のページに御座います。