【 まだ見ぬ未来へ 】


冬の寒さの中に春の兆しが見え出す2月の中旬。
初等部B組では・・・・いやただいまアリス学園全体で流行っている物がある。

「ほ・・・っ蛍!!それはまさか・・・・っ!!」

蜜柑の頭上に雷が光った。

「蛍ちゃん・・・・。それって・・・・」
「きゃ〜〜〜っ!!えー早く使ってみようよ♪」
「やっぱりすっご〜〜いっ!!ここまで作れるんだ〜〜♪」

1人の少女を囲んで委員長、野乃子、アンナ、そして蜜柑が騒ぎ出す。
そして、やはりその中心に居たのは初等部トリプルの今井 蛍だった。

「ふふふ・・・・すごいでしょう。
 あんな物、著作権さえ気にしなければ誰にでもつくれるわよ。」

堂々とそんなことを漏らす蛍。
・・・・・でも、それっていけないんじゃ・・・。

「今これってすっご〜いっ行列が出来ててなかなか出来ないんだよね〜。」

そういってアンナは蛍の腕の中のカメラを手にとると眺めて言った。

「未来の自分が映るプリクラだも〜んっ!!
 だから、きっと皆興味があるんだろうね〜。」
「でしょ?これで商売したら一儲けできるでしょうね・・・。」

少女じみた意見をやはりこの彼女が言う筈もなく。

「蛍ちゃん・・・・またお金?」と委員長。
「ねーねーっ!!蛍〜〜っ!!これやらせてーっ♪」と蜜柑。

わいわいわいわいの大賑わい。
そう。只今アリス学園の生徒に人気なのは
__________未来の自分が映るプリクラなのだ。
何年後の自分を見るかを設定して撮る。

まぁ滅多に見れないため連日ひとつの機種に行列が並ぶため
中々撮れない事が多いらしい。

・・・・蛍さん曰く「儲かりは皆で平等に分ける物だわ。」という事らしいのだが・・・・・・
著作権は一応気にして置きましょうね・・・?

「蛍〜一緒にとらへんっ!?」
「・・・・・・うざったいけれどいいわよ。
 丁度いい実験にもなるでしょうからね。」

そう言って蛍は委員長にカメラを渡すと蜜柑の隣による。

「設定は・・・・10年後の20歳でいいんだよね?」

と委員長。蛍は無言で頷くと蜜柑に向き直る。

「蜜柑、あんた髪の毛外しておきなさい。」
「え・・・なんでやねん。」
「売るのに邪魔。」
「・・・・・・・うる・・・・?」

蜜柑は首をかしげながらも髪の毛のゴムをとった。
・・・・・そりゃもう蛍さんの目が輝いてましたからね。

「じゃぁいくよ〜。はいチーズ」

委員長が声をかけると二人は愛想のいい笑いを浮かべる。


かしゃ。


び〜〜〜と音を立てて写真が出てくる。


「「「うわ〜〜〜〜〜ぁっ//////」」」

委員長は写真を取り出し、野乃子たちに差し出すと
3人の口から感嘆の声が漏れた。

「蜜柑ちゃん可愛いーーーっ!!」
「蛍ちゃんも綺麗だね〜。」
「なんかモデルさんみた〜い。」

手放しに誉められ蜜柑は顔を赤くしていたが
蛍は当たり前よ。とでも言うかのように顔をセンスで仰いでる。

「蜜柑ちゃん大人になったらモデルさんに、なっちゃうんじゃない?」

そうアンナが言うと蜜柑は顔を真っ赤にして

「そんなことあらへんよっ!!」

と否定しては隣に居る蛍の顔を見ながら微妙に喜んでいる。


・・・・・・理由は簡単。


蛍ですら未来の蜜柑の写真を見て
怪しい笑みを浮かべていたからだろう。
(その意味と180°違う事を蜜柑は感じているのだろうが)



______________がらっ



突然教室の扉が開いた。
入ってきたのは黒髪の少年と、金髪のウサギを抱えた少年。

「あっ棗さん!流架君!!おはようございます!!」

扉の近くにいた男子がそう声を張り上げると続いて
ほとんどの男子が口々に(ファンクラブ含め)挨拶を交わしていく。

流架も棗も別に表情を変えるでもなく
自分の席にカバンを置くとふと隣に戯れる少女等・・・+1名を見た。

・・・・まぁ多分1名の少女ぐらいしか目に入って
いないのだろうけれど。


そしてそれに気がついた委員長が
挨拶をすると、続いて野乃子達が挨拶をし
まだ写真をじ〜〜と眺めて蛍にくっついていた
蜜柑とくっつかれていた蛍が振り返り
挨拶をした。


すると微妙に棗が反応し、流架が笑みを浮かべて
「おはよう」という。(蜜柑限定ですか?)

それを気にするでもなくまたきゃーきゃーと
先ほど撮った写真についてあれこれ語り始める5人。

(女子曰く、棗君たちにそんな態度とるなんて許せないっ!らしいが)


「それにしても蜜柑ちゃんやっぱ可愛い〜〜〜っ♪」
「んなことあらへんよーっ。ほな、野乃子ちゃん達も撮ったらええや〜ん。」
「そうね。見たところ成功している見たいだし・・・やってみたら?」
「えっいいの!?」
「じゃぁまた僕が写真とるね?」

そう言ってまた委員長が並んだ野乃子とアンナを
撮っては騒ぎ出す。

それを不審に思ったのかいつの間にやら取り巻きに囲まれていた
棗と流架が取り巻きたちに「なにやってんだ?」
と聞くと丁度近くを通った、心読みが一言で。


「佐倉さんと今井さんの将来の写真を見せ合ってんじゃない?」


スタスタスタスタスタスタスタ



ガタ・・・・・・・・


「おいっ今井!!今、それ売ってるかっ!?」
「俺、2枚組ほしいっ!!」
「畜生〜〜〜っ俺、今日…金もってねーーっ!!」
「ちょっと今井さんっ!?そんなことやってるんだったら
 もっと先に言ってよ!」
「あぁぁぁぁぁ〜〜棗君たちの将来の写真を撮れるんでしょう〜〜〜?」

突然ぎゃーぎゃーと騒ぎ出す女子男子に
蛍がべっと舌を出す。

・・・・まぁつまり売らないということなのだろうけれど。
(可愛すぎて他に見せたくないらしい)
でも微妙に棗と流架を見ているのは気のせいですか?



「おい水玉」

ふと棗が全ての会話を聞いた上で蜜柑に話し掛ける。
心読みの一言を聞いて何故か行動には表さなかったものの
棗と流架は微妙に気になる。


ガリバー飴を舐めた時の少女を思い出したからだろうか。

「何やねん。一気にあんたの呼び方で腹がたったわ。」
「うっせぇよ。それよりてめぇ何やってるんだ。」
「何って・・・・興味あるん?」
「(日向君・・・早速どっかのハイエナみたいに興味もったわね)ちっ。」

蛍は微妙に舌打ちをすると委員長も撮ったら?と勧めた。

「〜〜〜っ。これはな、蛍が新しく・・・というか
 盗んで作ったんやけど、未来の自分が映るやつねん。」
「やっぱり///////」

そう言うと流架は顔を赤くして蛍がもっている
1枚の写真を気にしだした。

「なんやねん?流架ぴょん。赤くなりはって。」

蜜柑が首をかしげながら聞くと代わりに棗が。

「お前の将来なんて大体は予想できるな。」



・・・・・・・・・ブチ



(日向君も見たいなら素直に言えばいいのに。)

そう蛍が思ったのも知らず、蜜柑の堪忍袋の緒が音を立てて切れる。

「なっなっ!!何でウチがあんたにんな事言われなあかんねーーーーんっ!!」
「うっせぇよ。」
「〜〜〜っ棗には見せへんっ!!」
「いらねぇよ。」
「腹たつなぁぁぁぁぁっ!!」

どうやら棗の陰謀も無におわったようで。

「ええもんっ!!・・・・・・・・流架ぴょんは見る?」
「えっ///////・・・・・(チラ)別に・・・」

流架は隣でどす黒いオーラを発する棗を横目で見ると残念そうに首を振った。

本当にそれはそれは残念そうに。


「・・・・・そっか。まぁそんなこったろうと思ったんやけどな。」


いえ。本当は2人とも本心は見たいという気持ちでいっぱいなのです。


「あ・・・でも佐倉・・・」

流架が言いかけると向こう側から蛍の声でとんでくる。

「蜜柑。」

「いらっしゃいよ。委員長も微妙に可愛いわよ。」
「えっほんまっ!?見る見る〜〜〜っ♪」

突然蛍が蜜柑を呼ぶと蜜柑はすぐに輪の中にいってしまった。



・・・・・・・・。

棗と流架の間で重い沈黙が流れる。



蜜柑たちの方では「鳴海をとってみようっ」と
いう話や、「棗達をとって。」という願望に近い話が交わされている。



やっぱり溝が多すぎるのかもしれない。


向こうの世界とこっちの世界の差が


見せ付けられてしまう。



「あ・・・あの棗君、流架君。」

「「・・・・・!」」


ふと呼びかけられ顔を上げると、さっきまで
輪の中にいた、飛田がおどおどしながら立っていた。


・・・・そういえば虐げていたっけ?


「なんだよ。飛田。」

流架が問い掛けると委員長は手にもっていた
写真を取り出すとほっとしたように笑った。

「これ・・・。蜜柑ちゃんと蛍ちゃんの・・・・」

そう言って写真を差し出す。


「「え」」

見事に声が重なった。
まさか自分達を気にして・・・・・?

「見たかったんだじゃないかなって・・・思って。」
「なっ//////」
「・・・・・・・////」

委員長の言葉で2人は赤くなったが
机に置かれた写真を手にとると妙に嬉しそうな顔を・・・・浮かべる。
そりゃもうオーラでわかるぐらいに。

「じゃぁ僕いくから・・・・」

そう言って委員長が2人から離れると
ふと棗が呼びかける。

「飛田。」


「・・・・・・?」


「さんきゅー。」

それだけの言葉なのに委員長は嬉しそうに笑って
蜜柑たちの下に戻っていく。


彼女と同じ性質なのかもしれない。


つまらないことでも笑える。


あの人に。


棗と流架は同時に渡された写真を開いて見る。




__________________ぱたん。




静かに写真を裏返して置きなおす2人。




手を口元において笑みを隠していたが
何処から見てもわかるぐらいに嬉しそうで。




「将来が楽しみになったかも。」
「あぁ。」




まだ見ぬ未来にちょっとした期待をかけて。




_________________________________




「・・・・・失敗したわ。」
「え?」
「鳴海の10年後なんて見るものじゃないわね。」
「・・・・・・・・」




終わり


後書き

秋木の実様から頂いた小説をUPするのをすっかり忘れてました。(殴/爆死)
ありがたい小説を頂き、感無量です!!(*´∀`*)
女王の座に君臨している蛍様が最高です。
(逆らったりなんかしたらいろんな意味で怖いですし…/えっ!?)
本当にありがとうございました。

2005.9.14