「「「待ちやがれ!!この変態教師!!」」」
「蜜柑ちゃん、逃げるよ!!」
「えっ!?えっ!?何でぇ!?」
蜜柑が担任である鳴海と一緒に寝ていた事を知った蛍、棗、流架の3人が
一斉に鳴海に攻撃を繰り出していく。
普段、棗の側にいる遠隔操作のアリスを持つ少年・本田君。
鮫の帽子を被った少年・笠井君。小太りで短気な少年・松木君の3人が
この光景に見慣れたかのように眺めていた。これだから『慣れ』と言うのは、恐ろしい…。
「最近の棗さん、あいつ(蜜柑)の事となるとやたらムキになってないか?」
「……今井ならともかく、あの流架君まであんな事の為にアリスで動物を呼び出したりしなかったのになぁ」
「鳴海の奴、ま〜た、悪趣味なフェロモンをまき散らしてるぜ」
フェロモンガードを飲んでおいて正解だった……と、思う3人。
「……なあ、笠井。本田」
「「?」」
「あいつのアリスって、確か……無効化だったよなぁ?」
唐突としか言いようのない勇の話にあつしと実が「はぁ?」と言う。
「……今更、何言ってんだよ」
本田君が、ため息をつきながら言う。
「俺さぁ…あいつが鳴海のフェロモンを食らって、メロメロになった姿を見た事がねぇんだよ。
笠井と本田は気にならないか?」
「そう言えば、佐倉の奴……中等部の宮園 百合の女限定フェロモンですら
メロメロにならなかったしなぁ……」
「だったらさぁ……やってみねぇか?」
「俺は構わねぇけどよ。どうやってあいつをメロメロ状態にさせるんだよ?
あいつにはフェロモンのアリスは何一つ効かねぇんだぞ」
「此処に良いものがある!」
松木君は鞄の中から飴玉の入った袋を出した。
「……あっ、それって……セントラルタウンの店で売られている……」
「フェロモン飴だ。フェロモンのアリスが飴玉に固形化されたものと言ってもいいだろう!」
「……松木、お前まさか……」
「そのまさかだ」
松木君はすっかり、やる気満々になっているようだ。
時が経つのが早いのか、今日の授業は終了し、生徒達は寮へと帰宅していった。
MIKAN SAKURA
シングルの6畳部屋に戻り、着替えをしようとした時だった。
寮母ロボットのタカハシがドアをノックし、中に入っていく。
「どうしたん?タカハシさん。ウチに何ですか??」
「マツキクンカラナンデスガ、ヘヤニクルヨウニトノコトザンス」
「松木君が!?」
普段、棗の側にいる松木君に呼び出しをされるなんて思ってもいなかったので
意外としか言いようがなかった。
私服に着替えた蜜柑は、松木君の部屋へと向かっていく。
ISAM MATSUKI
蜜柑と同じく、シングルの6畳部屋である松木君の部屋のドアをノックした。
「松木君〜」
「おぅ、来たか。入れよ」
蜜柑は「お邪魔します」と言いながら、松木君の部屋に入った。
「松木君。ウチに用って何や?」
「たまには、お前と腹を割って話がしたいんだ。とりあえず、お茶でも飲め」
松木君は、お茶の入った湯飲みを蜜柑に差し出す。
このお茶の中に、熱の影響で溶けきったフェロモン飴が混入していたのだ。
蜜柑はそれに気づかず、そのお茶を飲んだ……。
すると、1分も経たないうちに蜜柑の頬が真っ赤に染まっていく。
「うわあぁぁぁっ!!!!」
ガタンッ!!!!
「何だ、今の叫びは!?」
「松木の奴に何かあったんだ!!行くぞ、笠井!!」
実の部屋で待機していた2人は大急ぎで勇の部屋に突入する。
2人は其処で、絶句の2文字が頭にのしかかるような光景を目の当たりにした。
「松木く〜〜〜ん!!//////好きv好きvv」
「さ、佐倉……落ち着け……//////(大汗)」
松木君の身体にしがみつき、思いきり抱きつく蜜柑の姿があった。
まるで、コアラのように。
どうやら蜜柑はフェロモンに対して、免疫がまったくない事が判明した。
この光景に2人はゾッとした。
もしも蜜柑のアリスが無効化でなかったら、鳴海の側にいる度にあられもなく
メロメロ状態になっていただろうと。
「笠井〜。本田〜。何とかしてくれ〜……。コアラみたいに、しがみついて離れないんだ。
おまけに、頬をスリスリしたりするし……//////」
「その割には、何だか嬉しそうだけど……」
嬉し涙に溺れてるとしか思えないような松木君の姿に笠井君が冷ややかな目で見る。
「お前、ちゃんと直し方を分かっててフェロモン飴を使用したんだろ?
だったら、直せばいいじゃねぇか」
「それが出来ないから困ってるんじゃねぇか!!//////」
フェロモン飴のマニュアルを笠井君と本田君に差し出した。
飴を飲んだ人を元の状態に戻す方法が記されていたのだが……。
「……た、確かに……」(大汗)
「……ど、どうすんだよ?この事が棗さんにバレたりでもしたら俺達……!!」(大汗)
「「「絶対、殺される!!!!」」」
3人は、今の状況を棗にバレないように事を進めていく覚悟を決めた。
******
「……おい、水玉が何処にいるか知らねぇか?」
B組の男ボス・日向 棗が透視のアリスを持つ生徒に、蜜柑が今何処にいるのか尋ねる。
透視のアリスを持つ生徒は「松木君の部屋にいますよ」と答えた。
何であいつが松木の部屋なんかに……と、考えなら勇の部屋へと向かっていく。
「おい、佐倉。少しの間だけでいいから、松木から離れてくれよ」
「嫌やぁ!!絶対、離さない!!//////」
本田君の頼みに首を縦に振らない蜜柑。
「これじゃあ、食事の時間になっても食堂に行く事が出来ねぇじゃねぇか……」
「かなり面倒だが仕方ない……俺と本田で、お前と佐倉の分の飯を部屋に持ってくしかねぇよ」
「食事は何とかなるが、問題なのは……」
本田君が深刻に考えている事、それは……風呂と寝る事だ。
その事に関して、3人があれこれと考えている最中だった。
「……松木」
ドア越しから、聞き覚えのある低い声に3人は心臓が停止してしまうぐらいビクッと反応した。
棗がやって来たのだ。
松木君にメロメロ状態と化している蜜柑を見せてしまったら間違いなく修羅場と化してしまうので
何とかして誤魔化さなきゃと必死になった。
笠井君と本田君は、松木君と蜜柑をクローゼットの中に押し込め
何事もなかったかのように大急ぎで取り繕った。
ガチャ……
松木君が出てくる気配がないので、痺れを切らした棗がドアを開け、部屋に入ってきた。
笠井君と本田君の2人は「……間一髪!!」と、心の中で叫びならゴクリと唾を飲み込む。
「あっ、棗さん。何か御用っすか…?(滝汗)」
「水玉の奴が松木の部屋に行くのを見たって奴がいたから、此処に来たんだ。
此処は松木の部屋なのに、……何で本田と笠井が居るんだ?」
「松木の奴、佐倉を連れてセントラルタウンに買い物しに行ったんです!!
俺達はその……留守番するよう言われて……(滝汗)」
「………」
松木君が蜜柑と一緒にセントラルタウンに行ったと聞いた途端、棗は眉間に皺を寄せる。
機嫌が悪くなったのが明らかである。
「……邪魔したな」
棗は、実とあつしの2人にそう告げて部屋を出ていった。
バタンッ………
ドアが完全に閉まったのを確認した、実とあつしは……
「はぁぁ〜〜!棗さんにバレるんじゃないかとヒヤヒヤしたぜ!!」
「松木!!もう出てきていいぞ!!」
本田君の合図に松木君と蜜柑が出てきた。
「……こうなったら仕方ねぇ、佐倉と一緒に風呂入って寝るしかねぇな」
「ま、待て!!いくらなんでもそれはヤバイんじゃ……!!」
松木君の降した結論に、本田君が必死に止めようとする。
「……セントラルタウンに行ったんじゃなかったのか?……」
「「「!?」」」
背後から再び、ドスのきいた低い声がした。
3人はロボットであるかのように、ギギギ…と首を後ろに向ける。
闇と言うべき、漆黒のオーラを身に纏った棗が立っている。
蜜柑が松木君とセントラルタウンに行くなんて有り得ないと思った棗は、松木君の部屋に引き返し
3人の会話を一部始終聞いてたのだ。
「「「な、棗さん!!何で此処に!?」」」
「……んなこたぁどうでもいい。そいつに何をした?」
棗の赤い瞳には、メロメロ状態になった蜜柑しか映していなかった。
「こ、これは……!!ちょっとした、子供心による好奇心で、した事でして……!!」
「……ほぅ?子供心だぁ!?」
バキボキ……ッと、拳を鳴らし
「「「ご、ごめんなさあぁぁぁぁい!!!!」」」
初等部寮全体に3人の絶叫が響き渡った。
ドフッ!! ドカッ!! …と言った効果音が鮮明に聞こえ
最終的には、蓑虫の如く張り付けにされましたとさ。
その後、蜜柑は棗の部屋へと
蜜柑をベッドの上に押し倒し、一夜を共にする羽目になった。
因みに、フェロモン飴を舐めた人を元に戻す方法とは……
『燃え上がるくらいの激しいキスをする事』である。
終わり
後書き
何だか、ラストあたりがいいかけんな終わり方になってしまいました。
遠隔操作の少年、鮫の帽子を被った少年、小太りで短気な少年に名前を付けてしまいました。
小説を書く際、名前がないとややこしい文になると思いましたので…。
オフィシャルで、ちゃんとした名前があったらどうしようとビクビクしています。
2005.9.10