++真夏のピクニック++



7月の中旬になり、アリス学園は楽しい夏休みに入った。
此処、初等部寮内の厨房で蜜柑が朝から早く起き、おにぎりやサンドイッチ等と言った
お弁当を作り、それをバスケットのカゴの中に入れていく。
一通り、作り終えると自分の部屋に戻っていき
クローゼットから一着の服を取り出し、着替え始める。
フワフワっとしたエメラルドのワンピースにレースがピラピラ付いたエプロン。
リボンを解いてツインテールの髪を下ろし、カチューシャを付けた。
身支度を調えるとお弁当を詰めたバスケットを片手に初等部寮から出かけていった。


「ねぇ…、あれって佐倉さんじゃない?」

「あっ、ホントだ」


その姿を目撃した心読み君とキツネ目君。


「珍しいよね。佐倉さんがメイド服(?)らしきものを着て出かけるなんて」

「本当?本当に蜜柑だったの…??」

『ほ、蛍ちゃん!?』(大汗)


蜜柑の親友であり、初等部B組の女ボスの座に君臨している蛍が
怒りのオーラを身に纏いながら心読み君とキツネ目君の目撃証言が本当か否か、問いつめる。


「う、うん…。確かに、佐倉さんだったよ…」

「しかも、いつも見慣れているツインテールじゃなくて、アクセサリーみたいなのを
 付けて髪を下ろしてたような…」

『その話、本当(か?・なの?)』


心読み君とキツネ目君の話を聞いた棗と流架がいつの間にか側にいた。
棗に至っては、既にブラックモードになっている。
蛍は自分の発明したものをバッグに詰め、蜜柑の後を追っていく。
勿論、棗と流架もだ。
心読み君とキツネ目君、その光景に気づいた委員長、野乃子、アンナも蜜柑の事が心配になり
後を付ける事にした。


「へぇ…、蜜柑ちゃんがそんな服を着て出かけるなんて…」

「蜜柑ちゃん、自分からあんな服を買うなんて事は一度もなかったのにね」

「お弁当を作ってたって事は、誰かと一緒に食べる約束でもしたのかな?」


委員長、野乃子、アンナの話に蛍と棗、流架は急いで蜜柑の後を追った。




「先輩。待たせてすみませ〜〜〜ん」


蜜柑が向かった先は、アリス学園内にある大きな湖のほとりだった。
そこには、【プリンセス・ミカン】の会長である皆川 学がいた。

※【プリンセス・ミカン】とは?
  アリス学園に存在する佐倉 蜜柑のファンクラブ名である。


「蜜柑…、俺のプレゼントした服を着てくれて嬉しいよVv」

『!!??』


学は蜜柑を強く抱きしめた。
蜜柑の後を付け、その光景を目の当たりにした蛍、棗、流架は
認めたくない今ある現実を突きつけられたかのように、学を殺してやると言わんばかりに飛び出そうとした。
委員長、心読み君、キツネ目君が3人を押さえつける。
こんなところで事を荒立てては、まずいと思ったからだ。


「あっ、皆川先輩。ウチ、お弁当を作ってきたんです。
 よろしかったらどうぞ」

「本当!!じゃ、遠慮無く頂くよVv」


学は新年と同時に神野から星階級を大きく格下げされた。
トリプルの豪華な食事から星なしと言う最悪な食事に格下げを受けて以来
副会長の椎野には内緒で、日曜限定で蜜柑にお弁当を作るよう頼んだのだ。
それ以来、学は日曜日になるのを楽しみにしていた。


「皆川先輩はどうして星階級を格下げされたんですか?
 じんじんに目をつけられるようなヤバイ事をしちゃったんですか?」

「な、何でもないよ…。蜜柑が気にする事じゃないから…」


学はサンドイッチを食べながら蜜柑を気にさせないように取り繕うが
蜜柑は?マークを頭の上に乗せ、茶金の瞳で学を上目遣いで見る。
あまりの可愛さに学の理性が一瞬にして切れた。


「蜜柑…//////」

「へ…?ふわあぁ!!//////」


蜜柑の色白とした細い腕を掴み、柔らかい芝生の上に押し倒した。
自分の身に何が起こったのかわからない蜜柑は、ただただ頬を桃色に染めるだけだった。
遠くからなので何の会話をしているのかよく分からないが
蜜柑が学に押し倒された事が分かれば十分だった。
蛍と棗と流架の堪忍袋の緒が遂に切れた。


「蜜柑…、この俺と結婚を前提に…//////」


学が取り出したのは指輪の入ったケースを蜜柑の前に差し出す。
それを開けると、豪華な指輪が入っていた。
そうはさせるかと言わんばかりに流架が鳥笛を鳴らし…


バサバサッ!!


「あっ!!!!」


カラスが勢いよく飛んできて、指輪を持ち逃げした。


「このクソガラス!!指輪を返せーーーッ!!!!」


しかし、カラスは学を小馬鹿にするかのように『カッカッカッ』と鳴くばかりだった。


「…皆川先輩。蜜柑を使いパシリするような真似をするのはやめてくれませんか?」(怒)

「…テメェが星なしになったのも全て自業自得だろーが!!」(怒)


バカンッ!!

ボッ!!



蛍はバカン砲で容赦なく学にめがけて撃ち、棗がアリスで髪の毛や服に火を放つ。


「ウギャアァァァァァ!!水ぅ〜〜〜〜ッ!!!!」


学は、勢いよくこの場から逃げ出した。


「蛍?棗?流架ぴょん??それに委員長達も何でここに…?」

「蜜柑ちゃん、大丈夫!?」

「あの先輩に酷い事されなかった?」


委員長とアンナが蜜柑の側に駆け寄る。
心読み君とキツネ目君も密かに心配していた。
この2人も実は、蜜柑に一目惚れをしていたのだから…。


「お弁当、どうしよう…。せっかく作ったのに…」


バスケットの中を見ると、蜜柑の作ったお弁当が沢山残っていた。


「あいつが戻って来る前に食っちゃえ、食っちゃえ!!」

「佐倉〜、食べて良いだろ〜??」

「うん、ええよ!!」


心読み君とキツネ目君がお弁当を食べたいと蜜柑にお強請りをする。


『いただっきま〜〜〜す!!』


蜜柑、蛍、棗、流架、委員長、心読み君、キツネ目君、野乃子、アンナはお弁当を食べながら
楽しい語らい等をした。




夕方になり、蜜柑たちは初等部寮に戻った。




「それじゃ、みんな。またね〜〜」


蜜柑は自分の部屋へ戻ろうとした時だった。


ガシッ…!!


「うわあぁぁぁッ!!」


蜜柑は誰かに腕を引っ張られた。
眉間に皺を寄せ、あからさまに怒っている棗がいた。


「な、棗…?何すんねん?」

「こいっ!!!!」


その赤い瞳には『逃がさねぇぞ』と意味合いが込められている。
蜜柑は強引に棗の部屋へと連れてかれ、逃げられないように棗はドアの鍵をロックし
邪魔者が入らないよう完全密室にする。


「…その服、何処の店で買ったんだ?」

「こ、これは…。皆川先輩から貰ったんや。
 せっかくもらったんやから着てあげないと失礼やろおもて…」


学が己の欲望を満たす為に、蜜柑にこんな服を送りつけたに違いない事が
安易に想像がつき、棗の怒りが更に込み上がる。


「ふわぁ…!!//////」


蜜柑の細い腕をグイッと掴み、ベッドの上に押し倒した。


「皆川の野郎から貰った服を着て、俺に内緒で会っていた事を許す訳にはいかねぇな。
 お仕置きをしないとな……」

「や…だぁ……//////」


抵抗できないように蜜柑の華奢な両手首を片手だけで押さえつけ、棗はニヤリと笑った。
蜜柑の茶金の瞳が潤んでいく。止めてと言う意味合いを込めて。
その行為が逆効果だったのか、蜜柑に対する欲情心を駆り立ててしまった。

その夜、蜜柑は棗の腕の中でとろけるような甘い時間を過ごされた…。




終わり

後書き

本編で蜜柑が着ていた服なんですが、花とゆめの付録『ピカピカSPブック』の
中表紙に登場した服装なんです。(メイドと勘違いしてしまうかもしれませんが)
あの服装で棗の側にいたら、食べられても文句は言えませんよね〜……。
蛍・棗・流架の御三家モードの基礎と言うべき小説が書けましたので満足しています。

2005.9.4