「うぇ……ひっく……」
滅多に人が寄り付かない東の森の入り口付近で蜜柑が啜り泣いている。
棗に幾度と髪の毛を燃やされながらも何とか我慢出来たが
流石の蜜柑も耐えられなくなってしまい、具合が悪いからと言って早退届けを出し
初等部寮には戻らず、東の森に吸い寄せられるようにやって来たのだ。
「あれ?蜜柑じゃないか。どうしたんだよ、こんな所にいるなんて」
「山岸先輩!!」
【プリンセス・ミカン】会計を担当している山岸が蜜柑の側に来る。
蜜柑は「ビェ〜〜!!(TдT)」と泣きながら、山岸に縋り付いた。
山岸は、日向 棗の奴が何かしたんだな……と、確信した。
彼女の経緯(いきさつ)を聞いた山岸は……
「そりゃ、確かにヒデェ野郎だな。アリスをそんなくだらない事に使っている野郎なんかと
さっさと縁を切れ。 我が身が可愛いのなら尚更な!!」
「確かに……ウチはアリス学園に来てから随分経ったし……。
いつまでもパートナー付きなんて嫌やしなぁ……」
棗がいないのを良い事に言いたい放題言う2人。
その頃の棗はと言うと…
「……(誰かが俺様の悪口を言っている?)/怒」
蜜柑と山岸の2人による悪口を感知していました。(笑)
「それより蜜柑……日向 棗に髪を燃やされてばかりのせいで、毛先が悪いじゃないか……。
ほっといたら綺麗な髪が台無しになるぞ」
「……山岸先輩……。セントラルタウンに連れてってください。
ウチなりに貯めたお金で、美容院で髪を短くしたいんです」
棗に髪の毛を燃やされまくっている影響で、少しずつ確実に短くなっていた。
毛先はちりぢりで、このままほっといたら髪質が悪くなってしまう。
炎で燃やされて髪を短くされるぐらいなら、自分から髪を短くした方がマシだと思ったからだ。
「……蜜柑がそこまで望むんであれば連れてってやる」
「やったぁ〜〜〜!!山岸先輩、大好き〜〜〜!!」
(シャンプーの甘い香りがする……。
皆川の奴が蜜柑を見初めた気持ちがわかる気がするなぁ……)
【プリンセス・ミカン】会長 皆川には絶対見せられない光景だと思いながらも、蜜柑と手を繋ぎ
一緒にセントラルタウンにある美容院に向かった。
「……まったく、あの馬鹿は何処に行ったのかしら。
早退したんだから、寮に戻ってると思ってたのに……」
初等部B組の女ボス・蛍が蜜柑を探しに行く。
「あ〜〜〜……蛍ちゃん。もしかして、佐倉さんを探してるの?」
「あの馬鹿が何処にいるかご存じなの?」
「それがさ〜〜、【プリンセス・ミカン】の山岸先輩って人が佐倉さんと一緒に
美容院に入っていくところを見たんだよ」
「……美容院?」
心読み君の言葉に、蛍が引きつったような顔をする。
「どうもありがとう。其処に行ってみるわ」(何で、あの馬鹿がそんな場所に!?)
山岸と言う男の口車に乗せられてデートされているに違いないと思い
強力な武器を抱えてセントラルタウンに向かった。
「山岸先輩〜!!お待たせしてすみませ〜〜ん!!」
美容院で散髪し終えた蜜柑が店から出てきた。
あのちりぢり状態だったツインテールが綺麗さっぱりなくなったが
可愛さはいつものままだったので、さっぱりした蜜柑の姿に山岸は顔を真っ赤に染まっていた。
「山岸先輩……やっぱり似合いませんか?」
茶金の瞳を潤ませながら上目遣いで山岸を見る。
「決して!!決してそんな事は……//////」
キッパリと否定する山岸。
「……棗、あそこにいるの今井じゃない?」
「……何だ、あの大袈裟と言っていいほどの武装は」
棗と一緒にセントラルタウンに来ていた流架が武装した蛍を目撃する。
はっきり言って、大袈裟極まりなかった。
しかし、あの蛍が武装しているという事は、またしても【プリンセス・ミカン】が
蜜柑に妙な真似をしているに違いないと直感した棗は流架を連れて蛍のところに行く。
「……今井」
「あ〜〜ら、流架ぴょんに日向君。こんなところで会うなんて奇遇ね」
「お前こそ、何処行くんだよ?そんなもん抱えて」
「それがねぇ…あの馬鹿が、【プリンセス・ミカン】の山岸先輩と一緒に
美容院に行ったから、連れ戻そうと思って……」
((山岸!?))
【プリンセス・ミカン】の言葉を聞いた途端、棗と流架が強張った顔になる。
すると、向こう側から聞き覚えのある笑い声がした。
笑い声のする方を向くと、蜜柑と山岸が楽しそうにホワロンを食べていた。
(((蜜柑・水玉・佐倉!?)))
3人は我が目を疑った。
蜜柑のツインテールが綺麗さっぱりなくなっており、蛍と同じぐらいのショートヘアーに
なっていたのだから。
(何で…何で、蜜柑の髪が短いの!?)
(これは夢…悪い夢を見てるんだ俺は!!そうに違いない!!)
(………っ!!!!)
ショートヘアーの蜜柑を見た棗がワナワナと怒りに震え、眉間に皺を寄せた。
背後にはドス黒いオーラが全身から流れている。
「……ぉぃ……」
いつも以上にドスのきいた低い声に気づいた蜜柑が山岸に抱きつく。
どうやら、警戒しているようだ。
「……テメェ…何だ、その髪は?」
「……ショートヘアーだけど?」
「テメェには聞いてねぇ!!」
棗を怖がっている蜜柑に代わって、ニヤつきながら代弁する山岸。
赤い瞳には燃えさかるような怒りが込められている。
「……元の髪型に戻せ。そうすりゃ、お咎め無しにしてやる」
「はぁ!?切っちゃった髪を戻せるわけないやろ!!」
「元の長さに戻るまでこれを付けたらいいでしょ?」
栗色の付け毛を蜜柑に差し出した。
「悪いんだけど、俺と蜜柑はデートの最中だから……お邪魔虫は消えて欲しいんだよねぇ……」
『お邪魔虫』と言う言葉に、棗の怒りの火山が噴火した。
「とっとと消え失せろーーーーっ!!!!下半身下劣男ーーーーっ!!!!」
ズドガガガガガガガガガ…………!!!!
連射製抜群の【スーパーケチャップ弾】を手にし、弾がなくなるまで山岸に乱射しまくった。
この乱射により、山岸は学園内の付属病院に搬送された。(ご愁傷様)
棗の機嫌が最悪だと悟った蜜柑は騒ぎに紛れて寮に戻ろうとしたが
あっさりと棗に捕まってしまった。
拉致監禁をさせるべく、棗は蜜柑を強引に部屋へと連れ込んだ。
「ふわあぁっ!!//////」
ドサッ……!!
蜜柑をベッドの上に押し倒し、棗が覆い被さるようにのしかかる。
「……俺様の断りなしに勝手に髪を切りやがるとは……大した度胸してるじゃねぇか」
「だ、誰のせいで……」
「元の長さに戻るまで、罰としてお仕置きを与える。
……暫くの間、夜が楽しくなりそうだな……み・か・ん」
「………っ!!!!//////」
耳に息を吹きかけられ、蜜柑の抵抗心が弱まってしまう。
そんな蜜柑の様子に棗は満足げにニヤリと笑った。
蜜柑が元の髪の長さに戻ったのはそれからして暫くだった。
終わり
後書き
蜜柑の髪の毛が短くなると言うストーリーを書きました。
ブーイングの嵐が来るんじゃないかと不安でなりませんが、ご安心ください。
最終的には、ちゃんと元通りの長さに戻りますから…。
(戻さなければ、棗の部屋に
棗は武器を持つと、更に攻撃的な性格になりそうですよね〜。
2005.9.7