「ほら……頼まれてたブツを作ってやったぞ」
「ありがと〜柚季ぃ〜…v」
2月14日バレンタインデーの前日……。
(蜜柑は気づいていないが)実の双子の弟である安積 柚季に
あるモノを作って欲しいと依頼した。
その「あるモノ」が完成したので、受け取りに来たのだ。
蜜柑は柚季にお礼を言い、意気揚々と柚季の部屋から出て行った。
******
2月14日 バレンタインデー当日
「棗くぅ〜んv私からのチョコを受け取ってぇ〜〜v」
「何言ってんのよ!?棗君は、私の事が好きなんだから引っ込んでなさいよ!!」
中・高等部のファンクラブの女子たちが一斉に棗にチョコを渡そうと、おしくら饅頭状態で詰め寄ってくる。
初等部ファンクラブ会長のパーマことスミレが追っ払おうとするのだが
自分を愛していると言う妄想に取り憑かれた女子の勢いは留まる事を知らない。
最初は、総無視していた棗だが…女子たちのうっとおしさに次第に堪忍袋の緒が切れかかっていた時だった。
(うわっ…相変わらず人気があるやっちゃな〜〜…。
一応、棗用にノンシュガーチョコを作ってきたけど手渡すのは後回しにした方が良さそうやな〜……)
そう考えながら、蜜柑が教室に入ってきた。
ガシッ……!!!!
「へっ…?な…、棗っ!?何やの!?」
蜜柑は、棗に抱きしめられていた。
「棗君!?一体、何の冗談!?」
「そうよ!ちょっとアンタ、棗君から離れなさいよ!!」
「この泥棒猫っ!!」
その光景に納得がいかない女子たちが一斉に、蜜柑に文句を言う。
「俺は、こいつのチョコにしか興味がねぇんだ…。
テメェらの甘ったるいチョコなんか食えるか。分かったら、とっとと帰れ」
紳士的(?)に女子たちを、お引き取り願おうとする棗だが…。
「棗君!貴方は、この女に騙されてるのよ!!」
「そうよ!こんな色気のない、何処にでもいるようなみずぼらしい女なんか、棗君に相応しくないわ!」
蜜柑に対して、言いたい放題言いまくる女子たちに
流石の蜜柑も堪忍袋の緒が切れた!!
――――ブチッ…!!(←堪忍袋の緒が切れた音)
「さっきから黙って聞いてれば…自分勝手な事ばっかり言ってんじゃねぇよ!!
テメェが他人の事をとやかく言える顔か、この性格ブスッ!!
ファンクラブだか何だか知らへんけどな、そんなくだらない道楽に現(うつつ)を抜かしている暇が
あるんやったら女として、自分自身を磨いたらどうなんや!?
そんなんやから、棗に相手にされずに逃げられるんだよ!!
ハッキリ言ってウゼェんだよ!!このすっとこどっこいの妄想族っ!!!!!!(大激怒)」
※妄想族…それは、現実では有り得ない事に取り憑かれた人間の事を言う。
ブラックモードにスイッチが入る前から蜜柑は、中・高等部のファンクラブの女子の棗に対する
度が過ぎた行動に蜜柑は、ファンクラブの女子たちに反感を抱いていた。
そして今日…、今まで溜まりに溜まった怒りが遂に爆発したのだ。
しかし、ファンクラブの女子たちは…。
「ブスですって!?」
「誰が妄想族よっ!?失礼ね!!」
「くだらないとは何よ!?私たちファンクラブを侮辱する気!?」
反省の「は」の1文字も見せようとはしなかった。
もはや、何を言っても無駄だろう…。
「…アンタらのような年増のおばさんに、何を言っても無駄なようやな……」
「年増ですって!?もういっぺん言ってみなさいよ!!」
蜜柑は、放物線を描くようにリーダー格の女子3人の口に何かを放り込んだ。
すると……。
フワ〜〜〜……
「きゃ〜〜〜〜!!!!」
「いやぁ〜〜〜〜何なのよ、これ〜〜〜〜!!!!」
「お、降ろしてぇぇぇ〜〜〜〜!!!!」
ファンクラブの女子3人の身体が風船のように身体がまん丸くなり、空中にその姿を晒された。
(分かりやすく言えば、相撲取りのような体型)
その姿に、男子たちは一斉に笑い出した。
お腹を抱えて笑い出す者や、必死で笑いをこらえようとするが
それでも肩を振るわせて笑っている者もいる。
「「……………っ…」」
(((わ…っ…笑われた…!(よりによって)棗君と流架君に笑われた!!)))
ファンクラブの女子3人は、太ってしまった姿を1番見られたくない棗と流架に見られた。
その上、笑われてしまった事に一瞬で絶望の渦へと飲み込まれた。
「口は災いの元…だって事を、この機会に勉強するんやな……」
鋭い目で残りのファンクラブの女子たちを睨みつける。
太った姿を、棗と流架の目の前で見られたくない女子たちは、一斉に逃げ出した。
「委員長。その粗大ゴミを高等部に捨てて頂戴ね」
「み…蜜柑ちゃ〜〜〜ん……(涙)」
蜜柑は、そのまま教室を後にした……。
******
「あ〜〜〜!!すっきりした!!流石は柚季の作った“パワーバルーンガム”やなぁ〜〜」
安積 柚季 特性・闇アイテム『パワーバルーンガム』とは…!?
食べると、自分の身体が一瞬で風船のようなまん丸い体型になり
空中に浮いてしまう効果があります。
一口食べれば1時間の効果を発揮します。
主に、自己中心的なウザイ女に食べさせるのが効果的です。
材料(100粒分)
雲のかけら | … | 10箱分 |
砂糖 | … | 500グラム |
オレンジの汁 | … | 適量 |
注意:このアイテムはセントラルタウンでは一般販売しておりません。
良い子は絶対に真似したり、作ったりしないでください。
「おい」
「ぎゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「黙れっ、ボケ!!」
いつの間にか、棗が背後にいたので蜜柑は驚きを隠せなかった。
「な…何で、アンタが此処にいるんや!?脅かすな!!」
「ほほぅ〜?安積の野郎に、ガムを貰ったんだってな?(微怒)」
「こ…これは…その…っ(滝汗)」
「俺様のプレゼントよりも安積の野郎のプレゼントの方が良いのか!?(怒)」
「ち…違っ……(涙)」
ジリジリ…と後ろの方に下がっていた蜜柑だが、壁際に追いつめられてしまった。
ひょい…と、棗にお姫様抱っこをされ
「…チョコだけで勘弁してやろうと思ったが…(ニヤリ)」
「何をする気ですか…棗さん……(涙)」
「身体で払って貰う(キッパリと)」
「嫌や〜〜〜〜!!離せぇ〜〜〜〜!!!!」
「つべこべ言うな!!」
こうして蜜柑は、棗の部屋へと
その翌日からは、アリス学園公認のカップルになりましたとさ。
中・高等部のファンクラブの女子たちは当然、意義ありまくりだったが
パワーバルーンガムで太った姿を棗と流架に見られたくないファンクラブの女子たちは
あの日以来、意義を申し立てる権限は失ったのは言うまでもない。
終わり
後書き
今回は、流架ではなく…蜜柑をブラックモード全快にしてみました。
ファンクラブの女子たちを追い出す為に柚季から貰ったものを「ホワイトデー」のプレゼントと誤解され
棗の部屋へと
小説のタイトルの通り、口は災いの元ですから十分注意してくださいね。
2005.9.8