++笠地蔵++
冬に閉ざされた山奥に1軒の家がありました。
その家に、最愛の祖父を亡くしたばかりの蜜柑と言う娘が笠を作り終え、町に出かけていきました。
「笠は如何ですか〜…」
大晦日である所為で笠は1つも売れる気配がありません。
やがて日が暮れ、雪が降り始めました。
人通りが少なくなるのが分かった蜜柑は売れなかった笠を抱え、山奥にある家へ戻りました。
「ハァ〜……1つも笠が売れんかった…。
明日は新年を迎える日だと言うのに、餅米を買うお金が手に入らなかった。
お餅を食べられる人がホンマに羨ましいな〜…」
ブツブツ言いながら雪の降る道を歩いていると、雪を被った6体の地蔵が佇んでいました。
頭や肩に雪を被っているので見るからに寒そうです。
「売れなかった笠やけど…これを被りぃや…」
蜜柑は、売れなかった笠を地蔵の頭に被せました。
しかし笠は5個しかありませんでしたので、あと1体分足りなかったのです。
「しゃーない…これで我慢しぃや…」
蜜柑は、持っていた手ぬぐいを地蔵の頭に括り付けました。
これで大丈夫だろうと思った蜜柑は、そのまま行ってしまいました。
******
そして、翌朝……
「うわぁ〜〜〜〜!!!!!!(*゚∀゚*)」
蜜柑が、家の外に出ると米俵や餅米、しめ縄など…と言った正月を迎えるのに必要な物が置かれてました。
もう嬉しくて嬉しくて堪らず、早速これを家の中に持ち帰ろうとしましたが…。
「待て、コラ(怒)」
「へ…?」
背後から声がしましたので恐る恐る振り返ると…
昨日の夕方、笠と手ぬぐいを被せた6体の地蔵が立っていました。
「キャーーーーーッ!!!!!!じ…じ…じ…地蔵が…喋ったーーーーーッ!!!!!!」
蜜柑は余りの光景に半狂乱と化してしまった。
地蔵が勝手に動き回ったり、喋る筈もないから無理もありません。
「聞け、人の話を(怒)」
その内の1体が、蜜柑にバカン砲を食らわしました。
「うぅ〜〜〜……何するんや〜〜〜(涙)」
「笠を被せてくれた礼として、お正月に必要な物を用意したんだけど…//////」
「それは、どうもありがとなv」
蜜柑の笑顔に、1体の地蔵は頬を赤く染まりました。
「お正月に必要な物を用意したんだから、それなりの見返りとやらを頂戴したいんだけど…」
「はっ!?」
見返りをくれと言われても、地蔵達に上げる物など用意している筈もなく
蜜柑は、大いに困ってしまいました。
「タダでくれるんやないの…?」
「当たり前でしょ!深い雪道の中、私達6人だけでソリを引きずり
此処まで、重たい荷物を運んで来たんだから!!
それなりの見返りを貰わなきゃ、やってらんないわよ!」
「…でも、ウチ…あんたらに上げる物なんか用意してないで…(汗)」
「そんな事だろうと思ったわ…」
地蔵達が運んできた荷物を確かめると、お正月に必要な物だけでなく
6人分の布団やら食器やら…と日常生活に必要な物まで入っていました。
「何や、その荷物は?ウチは、そこまで生活に困ってあらへんよ」
「何言ってんのよ!この布団や食器は私達のよ」
「あ…そう…って、私達!?」
「…見返りが貰えなかった場合、『家に住み着こう』と話し合いで決まったから…」
お礼が貰えなかった場合、地蔵達は蜜柑の家に住み着こうと着々と準備し始めました。
「ストップ!ストーーーーップ!!!!!!
ウチは地蔵6体を世話する程、そんな余裕はあらへん!!
荷物はいらへんから、とっとと帰れ!!!!」
「そ…そんな…っ(せっかく用意してきたのに/涙)」
「ほぅ…いらねぇだと…?」
手ぬぐいを被った地蔵がジリジリと蜜柑に詰め寄りました。
「俺様からの贈り物が、いらねぇだと…?」
わざわざ、買い出しに行って来たと言うのに…いらねぇだと?(怒)」
「ひいィィィィッ…!!(涙)」
「私達は、ちゃんと物を食べる事が出来るわ。
でも…あの道はアンタしか通らないから…そろそろ、雨風を凌げる場所が欲しかったのよね…」
「…と言う訳だ。今日から此処に住むから。勿論、拒否権無しで(しれっと)」
「拒否権無しって…勝手に決めるなーーーーッ!!!!!!」
こうして蜜柑は、地蔵6体の世話をする羽目になりました。
その内の1体である棗に見初められ、良からぬ悪戯をされるのは日常となり
蜜柑が胃薬を携帯しない日は、なかったと言う事です…。
めでたし めでたし?
後書き
今回のパラレル小説は「笠地蔵」です。
小さな親切でした事が、厄介な物を背負い込む羽目にならないとも限らないと言う教訓を文にしてみました。
現実路線で考えますと、只で物を貰える筈がありませんもんね〜…。
では、このへんで…。
配役
娘 | … | 蜜柑 |
・ | ||
地蔵1 | … | 蛍 |
地蔵2 | … | スミレ |
地蔵3 | … | 委員長 |
地蔵4 | … | 心読み君 |
地蔵5 | … | 流架 |
地蔵6 | … | 棗 |
2005.12.4