++醜いアヒルの子++
あるところに1羽のアヒルが居ました。
温めていた卵にヒビが入り、アヒルの雛が次々と生まれました。
ところが1つだけヒビの入っていない卵がありました。
よく見ると、この卵だけ模様が違ってたのです。
ピシッ……
この卵にも漸くヒビが入り、雛が生まれたのですが……その雛を見た、お母さんアヒルは
「…何て、醜いアヒルなの」
露骨に嫌な顔をしながら、こう言い放ちました。
******
卵から孵ってから1週間後。
お母さんアヒルは、子アヒル達の為に昼食である魚を捕ってきてくれました。
「さあ、みんな。ごはんの時間だから、こっちに来なさい」
「「「「「「はーいv」」」」」」
子アヒル達は、お母さんアヒルの元へ一斉に駆け寄り
昼食である魚を食べ始めました。
「………?」
ですが、卵から孵った最後の雛は魚の数が足りない事に気づきました。
「……ウチのは?」
「…自分で探してらっしゃい」
「ふぇ!!??何で!?」
「アンタのような醜いアヒルなんかに食べさせる物なんてないのよ!」
「醜いアヒルの子は醜いアヒルの子らしく、これでも食べてれば?」
アヒルの子達は、一斉に食べ終わった魚の骨を醜いアヒルの子に投げつけました。
醜いアヒルの子に対して素知らぬフリをするお母さんアヒルに縋り付きながら
一斉に醜いアヒルの子を馬鹿にしながら笑ったり、嫌味な目線を浴びせながら馬鹿にしたりしました。
******
激しい雨が降る夜中、アヒルの親子達は巣に戻って眠りに就きましたが
醜いアヒルの子だけは巣の中に入れてもらえず、寒さの余り震えていました。
「ううっ…寒いよぅ……(涙)」
醜いアヒルの子は寒さと心細さに耐えきれず、涙を流していると
3匹のアヒルの子が、葉っぱで出来た傘を差し出しました。
「…あの…これ……」
「!?」
「お母さんや、お姉さん達に見つからないよう作ってたの」
「貴女は醜いアヒルなんかじゃないわ」
3匹のアヒルの子達の優しさに感謝しながら、醜いアヒルの子は涙を流しながら魚を食べました。
「もしかしたら君は、別の種類の雛鳥なんじゃないかな…?」
「へ…?」
「必要な物は私達が全て揃えたから、お母さんやお姉さん達が目を覚まさない内に、旅に出た方が良いと思うわ」
「この旅の間で、貴女がどんな鳥か分かるかもしれないわ」
確かにアヒルの子達の言う通りだ。
このまま、此処に居ても醜いアヒルの子として蔑ろにされるのが目に見えている。
醜いアヒルの子として生きるよりも、自分が何者なのか確かめた方が良いのかもしれない……。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん…。ウチ、此処を出て行くよ。先刻の事は決して忘れないから…」
「急いで…」
「お母さんとお姉さんが目を覚まさない内に早く…!」
「元気で頑張ってね…。貴女が、どんな鳥なのか成長した姿を楽しみにしてるから……」
醜いアヒルの子は、アヒルの子達が用意してくれた荷物を抱え、自分探しへの壮大な旅に出ました。
自分探しの為に旅に出た醜いアヒル子の道中は、決して楽なものではありませんでした。
雨の日も、風の日も、雪の降る日も…醜いアヒルの子は、ただひたすら歩きました。
そして、2年後……
「はぁ〜…昨日も自分が誰なのか分からへんかったな〜…」
茶色い産毛で覆われていた醜いアヒル子は…旅の途中で茶色の産毛から純白の毛に生え替わり
醜いと言う言葉が嘘みたいに美しい鳥へと成長していました。
醜いアヒルの子は考え事をしながら池を泳いでいると、向こうの方から彼女と同じ
優雅に池を泳いでいる白い鳥の群れが居ました。
(ヤバッ……!)
醜いアヒルの子は、卵から孵って以来ず〜っと「醜い」と言われて爪弾きにされていましたので
このままやり過ごそうと白い鳥の群れから離れていこうとしましたが……。
「待てよ(微怒)」
「どうして逃げるの?」
「(見つかった)……えっ…別ニ…逃ゲテナンカイマセンヨ?」
「何でカタコトなんだよ。お前も俺達と同じ、白鳥だろ?」
「へ…?」
自分と同じと言う言葉を聞いた事が無い醜いアヒルの子は、我が耳を疑いました。
「ウチ…白鳥なん?アヒルじゃなくて……」
「お前知らねぇのかよ?俺達は白鳥はな…雛鳥の頃は茶色い産毛で覆われてて
成長すると茶色い産毛から純白の羽根に生え替わるんだよ」
「僕らも雛鳥の頃は、そうだったんだよね〜……」
「本当にウチ、白鳥なん?アンタらと同じ白鳥なんやね!?」
「先刻から言ってじゃん」
醜いアヒルだと思われたいた彼女は白鳥だったのです。
旅に出て2年…辛く苦しい旅を終えた醜いアヒル…ではなく
白鳥の子は漸く自分の仲間達に会え、居場所を手に入れました。
「ちょっと貴女!!彼から離れなさいよ!!」
何処からか聞き覚えのある強気な声が聞こえました。
「あ…っ」
雛から立派なアヒルに成長した2匹の意地悪アヒルの子が白鳥の子の前に現れました。
まさか、こんな所で再開する羽目になるとは夢にも思わなかったのです。
「何よ、その顔?私達を知ってるの?」
「あ――――!!!!2年前、お母さんや私達の所から逃げ出した醜いアヒル!!!!」
「…あ…あんなっ…ウチ…アヒルやなくて…白鳥やったんや……」
「嘘よ!私はアンタなんかを白鳥だなんて認めない!」
「そうよ!どうせ、彼や彼の仲間達の気を引く為に白いペンキでも使って醜い羽根を染めたんじゃないの?」
漸く自分と同じである仲間の白鳥を見つけたのに……。
ウチ…また1人ぼっちになるの?
白鳥の子が瞳を潤わせ、涙を流そうとした時だった。
バシャア……!!!!!
「「キャア……!!!!!」」
群れのリーダーである赤い瞳の白鳥が羽根を手のように使って、池の水を2匹のアヒルにぶっかけた。
「こいつは正真正銘白鳥だ。俺達の仲間でないアヒルなんかに追い回される筋合いは無い」
「この池は俺達の縄張りだ。さっさと出てけ!」
「彼女と君達の間に何があったのかは聞くつもりは無いけど
白鳥でもない君達に言い寄られるなんて、ハッキリ言って……迷惑だね」
「これが白鳥じゃなかったら何に見えるって言うのさ〜〜〜」
「これから僕らは北に向けて飛び立たなきゃいけないんだ。これ以上、追い回すのは止めてよ」
唯一の雌であるが故に、群れの白鳥は彼女をガードするかのように2匹のアヒルの子に
真っ白な目線を向けながら非難を浴びせる。
「俺はこいつが好きなんだ。醜いアヒルのテメェらなんか興味無い」
「うわ〜〜〜ん……お母さぁ〜〜〜〜ん!!!!!(涙)」
「白鳥に虐められたぁ〜〜〜〜!!!!!(涙)」
リーダーの白鳥のトドメを刺す一言に2匹のアヒルは悔しそうに泣きながら
お母さんアヒルの元に逃げ去った。
「…と言う訳で、お前は唯一の雌だから北の地方にある湖まで連れて行く」
「へ…?」
「君が嫌だって言っても駄目だよ。君は俺のものなんだから…」
「おい、こいつは俺のだぞ」
「何時からそうなったの?」
こうして白鳥の子は…自分と同じ白鳥の群れの中に入る事が出来ました。
群れのリーダーである赤い瞳の白鳥と彼の親友である碧色の瞳の白鳥に気に入られ
仲間と共に北の地方にある湖に向けて飛び立ちました。
終わり
後書き
今回のパラレル小説は「醜いアヒルの子」です。
登場したパーマと和歌子ちゃんは、とことん虐めっ娘です(酷)
パラレル小説ですと、パーマは悪者と言うイメージが強いから…。
感想頂けると有り難いです♪
キャスト
醜いアヒル…蜜柑
お母さんアヒル…蛍
アヒルの子1…スミレ
アヒルの子2…和歌子
アヒルの子3…委員長
アヒルの子4…野乃子
アヒルの子5…アンナ
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白鳥1…棗
白鳥2…流架
白鳥3…本田君
白鳥4…心読み君
白鳥5…念戸君
2006.3.10